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日本の住宅事情

わずか30年前後と、短命な日本の住宅

誰もが家を建てるとき、「長持ちする家」であってほしいと思うはずです。ところが、日本の家は、意外に短いサイクルで建て替えられています。
アメリカの住宅の平均寿命が約96年、イギリスの住宅の平均寿命が約141年に比べて、日本の家は平均約30年

それは、日本では家を「資産」とする認識が低いからです。これは、戦後、高度成長時に長持ちさせる住宅の建設を目的としなくなり、より早く、合理的で、より製造コストを下げることを目的とした家造りになってしまったため、建築材料の品質が悪化してきたこと、そして内部結露を発生させる断熱工法が原因であると考えます。

国別、住宅の卑近寿命の比較

では、短命になった原因の「建築材料の品質が悪化してきたこと」、「内部結露を発生させる断熱工法」について、具体的に理由を説明していきしょう。

建築材料の品質悪化

工業製品は必ず「劣化」します。

ハウスメーカーの出現にあわせて、それまでは、無垢の木と土で造られていた家が、価格が安く、大量生産に対応できる「新建材」という新たな建築材料で造られるようになりました。

「新建材」とは、言葉の通り、新しい建材という意味ですが、化学合成品で作られた建材です。今の住宅は、大事な柱や梁をボンドで貼付けた集成材、外壁材をセメント質原料で作られたサイディング、内装材をビニールクロスや合板フローリングなどの化学物質でつくられた工業化製品で覆ってしまっています。さらに、ガラスを原材料として作られるグラスウールなどといった化学繊維で出来た断熱材を適当に詰め込んで施工しているのです。見た目は傷ひとつない格好いい住宅がいとも簡単に安く出来上がります。工業化製品は必ず「劣化」しますから、5年~10年で屋根や外壁の塗り替えが発生し、20年ほどで床がブカブカするという現象が生じる訳です。そして、リフォームというより「修繕」にさしせばまれるのです。塗り替えをしないと、セメント原料である屋根材や外壁材が水を吸い込み、構造躯体の腐食が始まるからです。

構造躯体の腐食

サイディングとサイディングの間の隙間を埋めるため、コーキングというシール材を使います。このコーキングは、3年~7年すると硬化し、切れてしまうことがあり、雨漏りの原因となってしまいます。日本はもちろん、世界を見渡しても「木造の建物が一番長持ちする」ことは歴史が証明している『木造住宅』ですが、このように、木が腐ってしまう原因となる新建材や工法が主流になってしまったため、「木は腐る」「木造は弱い」という誤った常識が蔓延してしまいました。

内部結露を発生させる断熱工法

昔の日本の家は壁自体に調湿機能や断熱機能がありました

昔の日本の家は、小さな竹を組んで土壁で仕上げていたため、壁自体に調湿性能や断熱性能がありました。そのため、壁内で木が腐ることなく、百年、二百年と長持ちしている古民家が今でも日本中に数多く実在しているのです。

しかし、昭和40年代頃から急激に日本の住宅環境が変わってきました。 プレハブ住宅や海外から輸入されたツーバイフォー工法が普及するとともに、今までの日本の住宅になかった「断熱材」が急速に普及し始めたのです。
「隙間のない暖かくて快適な家」が日本人の心をつかみ、高気密、高断熱の家へと進化していきます。しかし、中途半端に施工された断熱材は、壁内の通気性を防ぎ、内部結露を誘発します。その結果、壁の中が結露して柱や土台などの構造体が腐って住宅の寿命が著しく短くなってしまったのです。

内部結露

内部結露とは、壁の中で結露が発生する現象のことです。結露が発生しても気づかないことが多く、構造体を腐らせ、建物の強度低下や寿命の低下につながります。
(左の写真は、結露により合板が腐ってしまった例です)

この昭和40年以降を境に、日本の建築は千年以上の永きにわたりその中の収蔵品を無事に保存している「正倉院」が長持ちした理由とは逆の方向に向かってしまったのです。木を腐らせない正しい施工をすれば、百年、二百年は優に長持ちする家を造ることが出来るのです。

それでは、壁内の結露を防止するにはどうしたら良いのでしょう?実は、壁内の結露が発生する原因ははっきりと解明されています。原因が解明されているのであれば、防止するのは簡単なはずですが、ある程度のコストがかかることが理由なのか、その知識すらない業者なのか、なかなか完璧に対策している業者が少ないというのは大変残念に思います。結局のところ、家を長持ちさせる=木を長持ちさせる「耐久性」、すなわち結露防止よりも、見た目や機能性、価格を優先してしまっているのでしょう。

それとも、わざと戦略的に長持ちさせないようにしているのかとさえ思ってしまいます。

皆さんご存知のように、日本はこれだけの技術国であり、輸出国でありながら、家は輸出されていません。そして、サイディングや合板フローリングやドアなどの、日本の住宅にほとんど使用されている新建材も、全く輸出されていません。要するに、住宅産業分野においては、海外ではさすがの日本もまったく相手にされていないということです。

工業製品を多様に使うことで、呼吸しない家になってしまっているのです。つまり、日本の気候風土に適した素材(建材)を使用していないから、30年未満という短命になってしまったのです。

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